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チップ

それは僕がまだUSに住む前、出張でNYに行ったときの出来事でした。

一通り仕事も無事終了し、週末を一人でゆっくり過ごす機会がありました。折角ですからマンハッタンをウロウロしてみようと思って、かと言って地下鉄やバスには必要以上に怖いイメージを持っていたので結局かなりの距離を歩きました。セントラルパーク、エンパイヤステートビル、タイムズスクエア…さすがにミッドタウンの範囲内ではありましたが。

そんなこんなで夜ちょっと遅くにあるホテルのバーに落ち着き、一人で飲んでいたのでした。「そうだ、せっかくだからマンハッタンで『マンハッタン』を飲もう」とか調子に乗りながら色々と。そろそろ帰る時間になったので伝票を持ってきてもらいました。で、日本人にとって一番悩ましい「チップはいくら置くのか」を考えながら財布を見ると…大量のコインがある。それもクォーター(25セント)とダイム(10セント)コインを中心に。

特に男の場合は、日本でも小銭をいちいち出すのが面倒で小銭が貯まっていく人がいますが、これが海外ではもっと顕著に現れます。さらに、クォーターって単位に馴染みが無く、計算が面倒くさいので思わず紙幣ばかりで支払ってしまい、結果として大量の小銭を抱えることになる。

当時何も知らない僕は、そのバーのサービスが良くてウェイトレスのお姉ちゃんの愛想も良かったこともあり、「そうだ、ちょっと多いけどこれを全部置いていこう」と思ったのでした。酒の勢いもあり、「ええい、大盤振る舞いだ」とばかり山積みのコインをチップとして置いて、しかもそのお姉ちゃんに「This is for you」などと威張ってしまったのでした…

と、ここまでで「あ~あ」と思える人はかなりのUS通かも。
実は今回は「やってもた」のリクエストに応えたページなので。


実はUSではこれはかなり失礼な行為です。仮にこれをペニー(1セント)でやってしまうとケンカ売ってるに近いです。とにかくコインでチップを支払ってはいけません。部屋に置くチップも同様に。この「常識」がUSで1ドル札が無くならない一つの理由ではないかと僕は思っています。多分「小銭を恵んでやる」というイメージなんでしょう。

もっとも例えばEUだと1ユーロ、2ユーロ硬貨があるのでコインでもOKだと思いますが。

その場では、その愛想の良いお姉ちゃんがさらに愛想良く受け取ってくれて上機嫌だったのですが、後でアメリカ人にこの話を聞いて大赤面。なまじ「気前よくカッコ良くふるまった」とか感じていたのでその反動でしょうか。未だに時々思い出して「あ"~」とかジタバタしてます。ペニーは置かなかった(と思う)のが救いではあります。

(絵 : ぽわんさん)

USA
2004年12月28日
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